欧州連合(以下「EU」と呼びます)の中でユーロ圏と呼ばれる21カ国で使用されている通貨であるユーロは、FXでは「EUR」と表記されます。ユーロとアメリカの通貨であるドルの組み合わせは「EUR/USD」、ユーロと日本の通貨である円の組み合わせは「EUR/JPY」、ユーロとイギリスの通貨であるポンドの組み合わせは「EUR/GBP」です。
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| ユーロ EUR |
ユーロ圏全ての国の情報を常に把握しようとすると膨大な時間が掛かる上に難易度も高いです。FXは難易度の高さとリターンの大きさは比例しません。重要度の高い取引材料に絞って情報収集及び分析を行う様にしましょう。
目次
【EUは共通の政策の中で行動を共にする欧州の国家連合】
EUは欧州の27カ国で構成される国家連合です。その内21カ国で共通通貨である「ユーロ」が使用されており、ユーロ圏と呼ばれております。
複数の国で共通通貨を使用する事で為替変動リスクの回避・両替の時間やコストの節約・通貨の価値の安定によるインフレの調整が比較的容易といったメリットがあります。
【ユーロは取引量2位の通貨】
取引量1位のドル程ではありませんが流動性が高いが故に
「値動きの頻度が多く取引チャンスが多い」
「スプレッドが狭く安定する」
「テクニカル分析が機能し易い」
というメリットがあります。
何故上記のメリットがあるのかを詳しく知りたい方は【FXの観点から見たアメリカ及びドルの特徴】の記事の【ドルは基軸通貨】の項目をご覧ください。
【アンチドルという側面】
全ての通貨ペアの中で最も取引量が多いのはユーロドルです。故に「ドルが買われるとユーロが売られる」「ドルが売られるとユーロが買われる」というユーロはドルと逆の動きをする事が多い通貨として知られております。以下の条件を満たした時はこの傾向が顕著に現れます。
「FRBの金融政策とECBの金融政策の方向性が逆」
「アメリカは景気が良いがユーロ圏は景気が悪い又はその逆」
特に中央銀行から発信される情報は非常に重要であり、例えばFRBはインフレ対策の為に高金利政策を維持するという声明を出している中でECBは雇用の安定化の為に緩和的な金融政策を行うという声明を出せばユーロドルは大幅に下落する事となります。
アンチドルの傾向が現れているかを見極める方法として、ドル円とユーロ円のチャートを見比べるという方法があります。
ドル円とユーロ円のチャートの形状がそっくりで、ドルが上昇すればユーロも上昇する(又はドルが下落すればユーロも下落する)という状態ならばアンチドルの傾向が弱い状態です。逆にドル円とユーロ円のチャートの形状に類似性が見られず、ドルが上昇してもユーロは上昇しておらず(又はドルが下落してもユーロは下落しておらず)、ユーロ円のチャートがドル円よりユーロドルに追随しているならアンチドルの傾向が現れていると言えます。
【ユーロはトレンドが出易い】
【取引量が多いが故の大幅変動と継続的な動き】
FXは注文の規模が大きい程レートの変動幅が大きくなります。
ユーロは取引量が非常に多い通貨です。これは大規模な注文が入り易いという事です。その為、レートの変動幅が大きくなります。
レートが大きく変動するという事は、その変動に耐えられずに損切りとなるポジションが発生します。取引量が非常に多いが故に損切りとなるポジションが大規模であり、更に大きくレートが変動します。その事を見込んで順張りでどんどんポジションを追加していくトレーダー達によって大きなトレンドが形成されます。注目度が非常に高いメジャー通貨であるが故にこの事が広く認知されており、流動性の高さ故に注目されているだけでなく積極的に実施されます。
上記の説明だけでは取引量・流動性という観点ではドルの方がより大規模なので、ドルの方がよりトレンドが出易いとお考えになる方もおられるでしょうが、ユーロには以下の4つの理由がある為、ドルよりユーロの方が動き出した時の方向性が分かり易く、長く続くという傾向があります。
①ユーロは地政学リスクに敏感
ユーロは地政学リスクの高まりで大きく売られ易い。地政学リスクが解消又は解消期待の高まりで積極的に買われ易い。
ドルは比較的地政学リスクによる動意が薄い傾向。
②ECBが金融緩和路線になり易い
金融政策の方向性が不明瞭になり難く、確信を持って注文を出し易い。
③ユーロはリスクオフに弱い
ドルはリスクオンとリスクオフの両方に強く、どちらの影響も受け難い為、リスクオン・リスクオフの情報で大幅変動し難い
④ユーロはドルより対円での取引量が少ない
FX取引高世界一は日本。日本人はドル円での取引が最も多く、逆張りを好む。つまり一方向へ大きくレートを動かすトレードに消極的でドル円はトレンドが出難い。ドル円は取引量第2位の通貨ペアであり、他のドル含む通貨ペアに及ぼす影響が大きく、ドル全体のトレンド形成を阻害する。
【ユーロがアンチドルであるが故の一方向への動き】
取引量が少ない通貨の場合は他の通貨が盛んに売買されていても、その通貨は取引材料が出ていなければ殆ど動かないという事は珍しくありません。その点、ユーロドルは最も取引量が多い通貨ペアであるが故にドルが買われると、これといったユーロの売り材料が見当たらなくてもユーロが売られるという事がよくあります。
つまりドル買いによる上昇だけでなくユーロ売りによる下落も同時に起きる為、ユーロドルは一方向へ大きく動くトレンドが発生し易いという事です。ユーロの売り材料が出ているタイミングと重なれば更に大きく動く事となり、ユーロドルのみならず他のユーロを含む通貨ペアにも波及し、ユーロを含む通貨ペア全体が大きく動いてトレンドが発生し易くなります。
【国債利回りとユーロの関係】
ユーロと相関性の高い国債利回りはドイツ10年債利回りです。ドイツ国債利回りの上昇でユーロ買い、ドイツ国債利回りの下落でユーロ売りです。
アンチドルの傾向が強く出ている相場では米国10年債利回りにもユーロが敏感に反応します。米国債利回りの上昇でユーロ売り、米国債利回りの下落でユーロ買いです。
【ユーロ圏は資源輸入量が多い】
ユーロ圏は原油や天然ガスといったエネルギー資源を大量に輸入する側の国が多く、ユーロのレートとエネルギー資源の価格は逆相関の関係にあります。
ユーロでトレードする際にエネルギー価格の変動を参考にする場合は取引量が非常に多く、ニュースに敏感に反応するWTI原油価格の推移を確認するのがお勧めです。
【リスクオフに弱い】
EUは言うなれば運命共同体です。自国に直接関係の無い出来事であってもEU加盟国で問題が起きれば助ける義務があります。
1つの国の狭い範囲で使われている通貨の場合は他の国で大きな問題が起きたとしても、その国には殆ど影響が無いという事もあります。しかしユーロ圏は多数の国で構成されているが故に世界中の幅広い地域と繋がりがあります。その為、世界の何処かで問題が起きた際にその影響を大きく受けるリスクが高いと言えます。
ユーロ圏に属する国の中には経済的に弱い国も存在しており、1部の国で経済危機が起きた時はその国だけの問題ではなく、他の加盟国が経済危機が起きた国を助ける為に自らの財を投げ打つ必要があり、ユーロ圏全体が弱体化するというリスクがあります。
【地政学リスク】
ユーロ圏の国々は地理的にロシアやアラブ諸国と近い関係にあり、貿易も盛んに行われております。その為、それらの国との関係が険悪化して戦争が起きたり、大規模な自然災害に見舞われるといった要因で貿易に支障を来すなどの問題が生じるとユーロが大きく売られる傾向があります。
具体例を挙げますと、ロシアがウクライナに侵攻を開始したという報道が流れた時にユーロは大きく売られました。ロシアとユーロ圏最大の経済大国であるドイツの仲が険悪化し、ロシアはドイツへの天然ガスの輸出を停止しました。天然ガスの輸入をロシアに依存していたドイツは大きな打撃を受ける事となりました。
ユーロは地政学リスクの高まりで大きく売られ易い。地政学リスクが解消又は解消期待の高まりで積極的に買われ易い通貨です。
【ECBの金融政策・ECB関係者の発言】
インフレの調整に加えて経済政策の支援もECBの責務としております。
一国の経済状況を見て金融政策を決めるのではなく、加盟国全体の経済状況を見極めて致命的な損害を被る国が無い様にする必要がある為、機動的な金融政策の変更が行い難く、特に利上げのペースは遅めという特徴があります。
嘗て起きたギリシャ危機の様に一部の国で起きた問題によってユーロが暴落してユーロ圏全体の弱体化に繋がる事もあり得る為、ユーロ圏全体としては比較的好景気でもユーロ圏の中に不景気な国があると金融引き締めで経済的苦境に立たされるのを避ける為に金融緩和路線になる事が多いです。
ECBが利上げを実施するかに於いて重要な指標はユーロ圏の消費者物価指数 (HICP)です。ECBはHICPが年2%を下回る物価上昇率を目標としている為、この数値が2%を上回っていれば利上げ確立が高い、下回っていれば利上げ確立が低いという事となります。
【経済規模が大きい国の景気の動向】
ドイツとフランスがユーロ圏の中で特に経済規模が大きい国です。ユーロ圏の景気の動向を把握する時はユーロ全体に加えて主にこの2つの国の経済指標を確認します。
【ユーロ圏全体のインフレの動向】
ユーロ圏全ての国で同じ1つの通貨を使用している為、国によってインフレ度合いが全然違うという状態になり難い事や、ECBの政策金利はユーロ圏全体のインフレ度合いを考慮して決定されるので、インフレ度合いの把握に関してはユーロ圏全体を見れば充分です。
【重要度の高いユーロ圏の経済指標】
重要度の高いユーロ圏の経済指標の一覧です。水色の字の経済指標は特に重要です。ユーロ圏全体に加えてドイツとフランスの経済指標も確認しましょう。
製造業購買担当者景気指数(PMI)
サービス部門購買担当者景気指数(PMI)
ZEW景況感調査
消費者物価指数(HICP)
失業率
四半期域内総生産(GDP)
欧州中央銀行(ECB)政策金利
欧州中央銀行(ECB)総裁定例記者会見
【まとめ】
ユーロの特徴を列挙します。
「テクニカル分析が機能し易い」
「トレンドが出易い」
「ドルと逆の動きをする事が多い」
「ドイツ国債利回りと正相関、米国債利回りと逆相関」
「エネルギー資源の価格と逆相関」
「ECBは金融緩和路線になる事が多く、特に注目すべき経済指標は消費者物価指数 (HICP)。HICPが年2%を下回っているかが政策金利決定における重要事項」
「リスクオフに弱く、地政学リスクに敏感に反応して売られる」
#この記事は筆者(tetsuryu)の独自解釈であり内容の正確性を保証するものではありません。

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